元気?写真の父に声をかけると
お〜来たかぁと言う声が心の中に聞こえる。
父が亡くなった時、納棺師の方が言った言葉がずっと心に残っている
チューブや酸素マスクの跡が残る鼻や口元を綺麗にしてくれてた後
髪の毛を整えている時、すごい可愛い顔してるっとケラケラと笑って言った。
父に声をかけてくれたのか…その時は特にその言葉が心に刺さるわけでもなく
ただ聞き流すことしかできなかった。
父の訃報を知り少し日をあけて訪れた人達の話を母から聞いた
父の幼少期や青年期はすごく可愛かったそうで同性にも可愛がられていたと、
遺影の顔をさすりながら教えてくれたらしい。
知らなかった…
私の知っている父はいつもギスギスして鎧をまとっている印象があった
険しい顔をして何かを常に考えている人で、優しい父というイメージは薄かった。
でも振り返ると亡くなる前1年くらいは可愛い妖精のような雰囲気になっていて
冗談で魔法映画に出てくる召使いみたいと家族と談笑したこと思い出す。
父は強い男を演じていたのかもしれない。
本当の父は可愛らしい人だったのかもしれない。
私は父親の本質を知ろうとしない、知りたくないと思っていたのかもしれない。
本当の姿を知ることが怖ったのかもしれない。
父が生きている時知りたかったか?と考える
いや、やっぱりそんなに知りたくない。
今頃、父は背中に羽をつけて楽しく大きく飛び回っているのかな…
なんてファンタジーのようなことを思ったりすると
父が使っていた整髪剤の匂いが香ってきたような気がする。
また会えたらたくさんお小遣いをもらおう。
その日を楽しみにしておこう。
また会う日まで。
(うちくる北九州店 うちくる通信スピンオフ 小話編)